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ちくさ正文館書店 古田店長おすすめの一冊

2016/9/1

ちくさ正文館書店 古田店長おすすめの一冊

「ジョージ・キューカー、映画を語る」
ギャビン・ランバート著 ロバート・トラクテンバーグ編 宮本高晴(訳)
国書刊行会 定価 5,184円

 ジョージ・キューカーは、1920年代後半から半世紀にわたり、ハリウッドの一線で50本にあまる作品を撮り続け、「女優の監督」と謳われた。「椿姫」でグレタ・ガルボ、「ガス燈」でイングリット・バーグマン、「スター誕生」でジュディ・ガーランド、「ボワニー分岐点」でエヴァ・ガードナー、「マイ・フェア・レディ」でオードリー・ヘプバーン、そして名コンビであったキャサリン・ヘプバーンとは10作を残している。
 私の年代では、名古屋駅前にあった毎日ホールで「マイ・フェア・レディ」(1965年)がギリギリロードショーに間に合った。すでに、かつての巨匠の活躍の場所は乏しく、「作家主義」が幅をきかせる時代が準備されていた。キューカーがピークであった1950年代を観る機会はほとんどなかった。遠回りすることになる。本書でも協調されるが、「『作家』と見なされるのをいやがる」ので、長らく日本で正当な評価が得られなかった。キューカーに目覚めさせてくれた直接のきっかけは、「キャサリン・ヘプバーン自伝」(文春文庫)で、ケイトとキューカーの友情の深さを語る一章を読んだことだ。芝山幹郎氏の訳注に助けられる。
 演劇出身者らしいキューカーの発言がある。「つねに変わらないのは、自分はいつもベストの人材、最強の協力者
を求めているということだ」「自分に活躍可能な範囲のなかにこそ、自由はある」と言いつつ、「私の仕事は実のところ俳優に始まり俳優に終わるものなのだ。だから俳優を通しての自分の仕事がうまくいけばいくほど、自分の仕事は作品の中に消えていく、と私は思っている」と。一流の演出家の至言である。
 ジュディ・ホリデイを忘れてはならない。キューカーとは5作に出演している。代表作「ボーン・イエスタデイ」(1950年)でアカデミー主演女優賞を受賞するが、未公開であった。じゃじゃ馬馴らしものとしては「マイ・フェア・レディに先駆け、面白さではこちらが上である。
 もう1作「有名になる方法教えます」(1954年)のホリデイを評して、「その間の置き方はまるでテキストのコンマまでが見えるよう」「真のアーティストだったんだ」と敬意を表す。 両作とも現在DVD化されているが、「オールタイムベスト映画遺産 外国映画男優・女優100」(キネマ旬報社・2014年)では齋藤敦子さんだけが1票入れている。
  本書に贅沢に使われた魅力的なスチール写真は、キューカーの本質を雄弁に語っている。本書と合わせてDVDを観賞すれば、本書の面白さ・新しさを発見することを保証します。


ちくさ正文館書店
〒464-0075 名古屋市千種区内山3-28-1
電話:052-741-1137

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